第21回:「街と一緒に」―鎌田友美子さん―

0
2190

趣味が運動で、興味のあることにはすべてチャレンジしてきたという鎌田さんは、アクティブな行動派。旅行で訪れた上海に「ピンと」来て、翌年から上海で仕事を始めた。

「元々は、地元で栄養士を、その後OLもやったのですが、毎日代わり映えがなく、与えられたとこをこなすだけの仕事に対してやりがいを感じられず悶々としていました。そんなとき、一緒に住んでいた1匹の犬との別れを経験して、動物と関わる仕事をしたいと思ようになったんです。それで、専門学校に入りなおしました。そこでトリマーの技術を磨き、全国で2位になったんですが、シャンプーを嫌がるコを無理矢理押さえつけたり、完璧に仕上げる為に何時間もテーブルの上に立たせ続けたりと、人間本位なトリミングがイヤで、違和感を覚えるようになりました」

自分のやりたいトリミングを求めてアメリカへ。
日本人オーナーのサロンで3ヶ月ほど修行させてもらった鎌田さんは、今後も海外でやってみたいと考えるようになった。
「当時、日本のトリマーはいわゆる3Kで、技術職なのに待遇があまり良くありませんでした。海外でやってみたいけど、仕事するならアメリカじゃない。そんなとき旅行した上海にピンと来て、ここでやりたいと思いました」
街の雰囲気、パワー、エネルギーを肌で感じた鎌田さんは、2005年1月上海へ。自宅でトリミングサロンをオープンさせた。上海に来るとき知り合った美容師さんがお客さんを紹介したくれたので、仕事には困らなかった。
「彼女という人柄にお客さんがついて、だから私のことも信用してもらえる。上海は、人だなと思いました。彼女との出会いには、本当に感謝しています」

2006年、日系ペットサロンオープン立ち上げを手伝い、1年半ほど会社に所属するが、2007年に独立。今ではペットシッターとして活躍する日々を送る。
「独立したのは、会社と自分のやりたいことがずれてきたかなと感じたからです。今は、ペットの表面というより、内面から健康に、人と動物がもっと近くなれるよう、幸せに楽しく暮らせるような社会貢献がしたいと思っています」
体をセルフケアすることの必要性を伝えたいという気持ちから、フラワーレメディーの資格を日本で取得。ペットを癒す花のエッセンスは、効果を見た飼い主さんからも大好評だという。
「人にも効果のあるフラワーレメディーですが、ペットは言葉を話すことができないからこそ効果がはっきりと表れるんです。人と動物の関係がもっと良くなるように、必要な人(ペット)に広めていきたいですね」

休みも、忙しい時期も不定期だが、時間ができると家の近くを散歩したり、電動自転車で少し遠出したりもする。
「徐家匯という場所に住んでいるのですが、気軽な雰囲気が大好きです。上海の良いところは、遠慮しなくて良いところ、自分がやりたいときに、やりたいことができるところだと思います。もちろん、生活していく中でいやなこともたくさんありますが、中国が原因でいやになることはないですね。そういうことって、自分の中に原因があることが多いと思うんです。私のテーマは“ホリスティック・ケア(総合的なケア)”。予定は未定だけど、どこにいてもしていたいことですね。そのためには、まず自分がリラックスすることが大切なんだと思います」

イヤでも自分と向き合うことのほうが多いフリーランスの仕事。その葛藤を乗り越えてきたからこそ、鎌田さんの言葉には真実が表れているのだろう。そしてその強さが、上海の街とエネルギッシュに共存できるコツなのだ。

前の記事道具の達人「包丁研ぎの周さん」
次の記事China Express 2010 フォトレポート
宮城県生まれ。 国際基督教大学教養学部卒業。2004年より上海戯劇学院に留学。 その後、上海にて映像制作の仕事に関わる。現在は東京で、コーディネーターときどきウェブ、イベント制作を担当しています。

返事を書く

あなたのコメントを入力してください。
ここにあなたの名前を入力してください