第16回:EVERYDAY

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ふたたび、上海での生活が始まりました。

生活のすべてを自分がコントロールする、新しい日々。何にもしばられない自由さと、自由すぎる不自由さを同時に実感する、いわゆる「フリーランスの孤独」というものを初めて知りました。

会社は辞めた。住むところはあるけれど、生活は不安定で先が見えない毎日。
組織に属していない自分は、社会からも切り離されたようにも思え、そんな自分にちょっとした葛藤を感じたりもしました。自分、意外と弱いな・・・
仕事は何かとあるもので、短期でディレクターをしたり、翻訳をしたり、引き続きルームメイトのWeb制作の仕事を手伝ったりして、毎日はあっという間に過ぎていきました。はっきりいって、会社で働いていたときより自由になる時間がありません。昼間はディレクターの仕事や、ミュージカルのために中国メンバーとミーティングをしたり、戯劇学院に出向いて留学担当の先生と打ち合わせをして、夜になったら集中して翻訳やWebの仕事をこなす。とにかく何でもやりたくて、うまくできなくて、あせったり、落ち込んだり、ちょっとずつでいいから前に進みたくて、もがいているうちに4月になっていました。あと20日でミュージカルのためにまた日本に行かなくてはいけないのに、自分の仕事のことも、中国メンバーのビザ取得のことも、 何ひとつとして結果が出せていない気がする。
何か間違えてるのかな?と徹夜明けのアタマでぼんやりと思いました。
目の前にあることをこなしていくだけでは、今までと同じように毎日が過ぎていってしまうのかもしれない。上ステメンバーとしての自分ではなく、個人としても方向性を決めようと思いました。

自分の方向性を決めるにあたって、まずは優先順位をつけることにしました。自分のこだわりはやっぱり「上海情報ステーション」だし、こだわりのモトにあるものをはっきりさせたい。そこに、私が上海にいる意味もあるような気がしました。
上海情報ステーションを始めたときの気持ち。個人の枠を越えて、日本と上海をつなぐためにやりたかったこと、自分にできることは何だったんだろう。
いろんな人が、いろんな気持ちで上海に来て、一定の時間を過ごして去っていく。その気持ちを伝えたり、形にしたりしていくうえで、安心して自分を表現できるプラットフォームを作りたい。自分が、メンバーが、関わる人に対して、それぞれが興味のあることでつながり、共有できるような・・・「おもしろ集団」?そういうコンセプトが、いちばん近いように思えました。

そう納得したら、まわりが動き始めました。
中国メンバーのビザがおりたので来日の予定を決めたり、上ステ留学説明会の日程を決めたりしているうちに、気持ちが自然に切り替わるのを感じました。状況が変わったわけじゃないけれど、自分の方向がクリアになったことで、自分自身のことも、前よりちょっとだけわかった気がしました。納得できないことはできないし、そこにどうしてもこだわってしまう。だったらそれに向かって、毎日を積み重ねていきたい。そうやって、ゆっくりでいいから、人のつながりを広げていけたらいいなと思います。

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宮城県生まれ。 国際基督教大学教養学部卒業。2004年より上海戯劇学院に留学。 その後、上海にて映像制作の仕事に関わる。現在は東京で、コーディネーターときどきウェブ、イベント制作を担当しています。

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