第13回:「その流れの中で」 -永田欣子さん-

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    父親の仕事の都合で、小・中・高とヨーロッパで過ごしてきたという永田さん。そのせいか、小さい頃から海外で暮らすことも国と国とを行き来することにも特に抵抗はなかったという。

    日本で大学を卒業し、就職した永田さんは、企業の研修・資格取得のサポート部門で働くようになった。

    「新人研修や資格を取得するまでの講習のアレンジをしたり、企画を立てたりする仕事だったのですが、人と触れ合うことは好きだったし講師の先生とも仲良くなれたりして楽しい毎日でした」
    この頃父親が蘇州に赴任していたため、旅行で初めて中国を訪れた永田さんは、今までにない衝撃を受けた。
    「海外には慣れていると思っていたのに、とにかく初めての経験ばかりで、すごく興味を惹かれたんです」
    初めて目にする景色、リアカーを引くおじさん、得体の知れない赤い木のツボ、たくましく日々を生きる人たち。
    「ヨーロッパがそうでないというわけではないのですが、中国では人々がエネルギッシュで、たくましくて、圧倒されました。私もがんばらなきゃ、このままじゃだめだと思いました」
    毎日に不満があったわけではなかった。ただ、そういう人たちの存在を知ってしまった。

    2004年2月から1年間、蘇州大学へ留学した。
    このとき、日本のときの会社のつながりで、ISO関連のコンサル事業を手伝ってくれないかという話をもらった。
    「蘇州が大好きだったのですが、上海で起業するということで2005年に上海に移りました。今は、ヨーロッパに街並みが似ているところもある上海が大好きです」

    上海での暮らしが落ち着いた頃、友達も増え、趣味で習い事も始め、そしてヨガに出会った。

    「小さい頃バレエを少し習っていたのですが、ヨガは初めてでした。体のコンディションもわかるようになったし、終わった後の爽快感が好きなんです。難しいポーズなんかはもちろんすぐにはできないし、ヨガ自体始めたばかりなのでまだまだ修行が必要なんですけど、自分はずっとやり続けていけるんじゃないか、やり続けたいと思うようになりました」
    秋からは先生になるためのトレーニングコースに通い、修了後はすぐにでも先生として経験を積んでいきたいという永田さん。上海でヨガといえば外国人を中心にプチ・セレブの代名詞のように扱われているが、永田さんの目指すものはじゃっかん異なっているという。
    「ヨガは敷居が高そうに思われているけれど、本当はもっと気軽に誰でも楽しめるものだと思うんです。広くない場所でも、ヨガマットひとつあればできるし、ポーズも簡単なものもあるし。自分だけでなく、多くの人にヨガの爽快感を味わってもらいたいし、将来は中高年層を対象にしたクラスもやってみたいなと思っています」ヨガとの運命的な出会いには、もうひとつ理由がある。「遊牧民」を自称する永田さんは、世界中どこにいてもできることも仕事の条件なのだ。
    「上海はもちろん好きなんですけど、ずっとここにいるという気はしないんです。ヨーロッパ・日本に住んできて、中国という衝撃を受けたわけですが、世界中でまだ見たことのないものや行ったことのない場所が本当にたくさんある。それをできる限り体験したいんです」

    休日は愛犬エールを連れて、犬友達とカフェに行ったり散歩したりして過ごしているという永田さん。衝撃を受けたその場所で一生やりたいことに出会った永田さんは、上海で今を過ごしながら次の遊牧先を探し始めている。

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    宮城県生まれ。 国際基督教大学教養学部卒業。2004年より上海戯劇学院に留学。 その後、上海にて映像制作の仕事に関わる。現在は東京で、コーディネーターときどきウェブ、イベント制作を担当しています。

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