第9回:「夢のはじまり」-佐藤恵理さん-

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上海で働きたいという強い希望からあらゆる可能性を試してきたという佐藤恵理さん。その夢が叶い、日本人オーナーのサロンで働き始めて1年になる。日本ではヘアメイク事務所に所属したり、美容院に所属したりする中で、“実践”にポイントを置いた職場選びを心がけてきた。

「学校を卒業してすぐ、自分のセンスを試すことのできる環境に身を置きたいと思い、チャンスのあるところへと移っていきました。美容師になろうと思ったのも、スタイリングの際にメイクだけでなくトータルで作品を創り上げたかったからです」
仕事自体に迷いはなかったものの、とあるドキュメンタリー番組をきっかけに上海渡航を密かに決意した。
「上海で働く女性をテーマにしたドキュメンタリー番組で、日本人の女性がヘアメイクとしてファッションショーに参加していたんです。20代前半の、しかも日本人女性にそんなチャンスがあるなんて、と目が覚めるような思いでした。それから上海についていろいろと調べたり、人に会ったりしてタイミングを待ちました」

タイミングはすぐに訪れた。所属先のサロンに上海人の客がやってきたのだ。
「彼の紹介で人脈も広がり、実際に上海を訪れることにもなりました。当時の上海を肌で感じたことで、上海への想いがよりいっそう強くなったのかもしれません」
縁があって出会い、その出会いがまた縁を呼ぶ。この頃知り合った日本人男性・安藤さんが、今の店のオーナーだ。
「当時安藤さんは別のお店で働いていたのですが、私が日本に帰った後も連絡は取り続けていました。彼が自分のお店に私を誘ってくれて、一緒にやってみようと思ったのです。」
根っからの一匹狼だと自称する佐藤さんだが、今の店は皆で店を盛り上げていこうという暖かい雰囲気で、とても居心地の良いものだという。
「日本にいた頃より仕事量は増えたのですが、上海自体の風土やお店の自由な雰囲気もあって、今は伸び伸びと仕事ができている気がします」

上海で働くという夢を叶えた佐藤さんだが、本当の夢はまだ叶えられていないという。
「日本にいるときからテレビ寄りの仕事が多かったのですが、実は雑誌の仕事が一番好きなんです。雑誌は残るものだし、一枚の写真ですべてが決まる。それを考えたり、実際に創り上げていく過程が楽しいんです。今は準備段階ですが、作品を撮影したりまとめることから始めています」
上海にはチャンスがある。誰もが一度は夢を見て、様々な思いを抱えてその地を訪れては去っていく。上海歴1年にして佐藤さんはすでに少なくはない別れを経験してきた。
「おもしろいと思えるからここにいる。それがある限り自分はここを去るべきではないと思うんです。自分にとってやりたいことがあって、それをやってみるチャンスがあるから毎日が楽しいです」

華やかな業界に身を置きながらも確実に歩みを進める佐藤さんの毎日は、充実していながらもどこかもどかしく過ぎてゆく。ふたたびタイミングを待つときが、もうすぐやって来る。佐藤さんの夢は、まだ始まったばかりなのだ。

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タカハシ アヤ
宮城県生まれ。 国際基督教大学教養学部卒業。2004年より上海戯劇学院に留学。 その後、上海にて映像制作の仕事に関わる。現在は東京で、コーディネーターときどきウェブ、イベント制作を担当しています。

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