ネット動画視聴サイトの潮流

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さあ、comicupでも熱かった「進撃の巨人」。
戻ってきてから私もすっかりはまり、今では毎週日曜日の更新が待ち遠しく正座待機です。

これまで中国のネットは海賊版天国とも言われるほど、数々の海外ドラマやアニメの海賊版であふれていましたが、ここ数年で流れが変わってきているようです。
今日はちょっとそんなお話。

中国大型動画サイト業界の潮流は⇒
【差別化と生き残りのために、版権を購入して正規版を放映】
となってきています。

まずその業界的な流れを作ったのが、中国版YouTubeともいわれる大型動画共有サイト「土豆網(tudou)」。現在は、優酷網(youku)と合併し業界最大手となっています。

土豆網: http://www.tudou.com/

2011年11月にテレビ東京と中国におけるパートナーシップを締結。
12月1日より、人気アニメーションを、日本で放送された1時間後に中国語字幕付きでストリーミング配信を開始。開始時は「NARUTO-ナルト-疾風伝」、「BLEACH」、「銀魂」、「君と僕。」、「侵略!?イカ娘」、「SKET DANCE(スケット・ダンス)」、「プリティーリズム」の7作品を即日配信。
全て無料公開で、土豆網は広告収入を基本としている。
(日本アニメだけでなく、アメリカアニメや「喜羊羊と灰太狼」等の国産アニメも積極的に配信)

2013年で更新中の日本アニメ:

「NARUTO-ナルト-疾風伝」、「悪の華」、「ムシブギョー」、「這いよれ!ニャル子さんW」、「銀河機攻隊 マジェスティックプリンス」(動画工房およびオレンジ制作。TOKYO MXなどで放送)等

テレビでの海外アニメの放送は、近年広電総局による輸入許可が全く降りていないため(海外アニメ輸入のために必要な広電総局が発布する「動画片発行許可証」は、2006年に批准された「テニスの王子様(網球王子)」(輸入機関:上海メディアグループ)以降おりていません)、新作が正規で放送されることはありません。
(独自審査権のあるCCTVでの放送や、映画枠で輸入される劇場版アニメは別枠での放送がないわけではありませんが、ごく少数)

このような状況下で、ネットでの海外アニメの輸入・配信がどのような扱いとなるのか業界的に注目を集めていましたが、流れとしては容認・拡大・加速で動いているようです。

そして、ありました!
「進撃の巨人」を毎週正規で更新しているのが、百度(BAIDU)傘下の動画視聴サイト「愛奇芸網」です。

愛奇芸: http://www.iqiyi.com/

「ドラえもん」、「名探偵コナン」、「ちびまる子ちゃん」、「クレヨンしんちゃん」等日本の著名名作アニメ多数をストリーム配信している。(海外アニメ「スポンジボブ」や「トムとジェリー」なども配信)
「機動戦士ガンダムAGE」を2011年10月に日本の放映と同時配信。その後も新作日本アニメの同時配信が行われている。

2013年で更新中の日本アニメ:

「はたらく魔王さま!」、「進撃の巨人」、「デビルサバイバー2」、「革命機ヴァルヴレイヴ」、「とある科学の超電磁砲S<レールガン>」、「デート・ア・ライブ」、「ゆゆ式」等

他には、新海誠監督作品・劇場アニメ「言の葉の庭」を今年5月31日に日本と同時公開した「楽視網」。

楽視網: http://www.letv.com/

2013年3月の東京国際アニメフェアでも、多数の最新日本アニメ作品を購入したことで話題になった。劇場版やテレビアニメの日本とのほぼ同時公開でも話題となっている。基本は無料公開だが、一部最新作など期間限定で有料公開も行なっている。
(新海誠監督作品「言の葉の庭」は6月21日までは1回5元の有料視聴。それ以降は無料)

楽視網で正規版が公開されている日本アニメ(一部)

2012年
◆テレビアニメ「ソードアート・オンライン(刀剣神域)」(25話)、「ROBOTICS;NOTES」(22話)、「PSYCHO-PASS サイコパス」(22話)、「マギ」(25話)、「猫物語(黒)」(4話)、「ブラック★ロックシューター」(8話)、「聖闘士星矢Ω」(61話)等
◆劇場アニメ「ねらわれた学園」他

2013年
◆テレビアニメ「俺の妹がこんなに可愛いわけがない。」、「うたの☆プリンスさまっ♪マジlove2000%」、「PSYCHO-PASS サイコパス」等
(中国語字幕付きで日本放送と同時公開)

このように、ネット上で正規版日本アニメが日本とほぼリアルタイムで、しかもしっかりとした中国語字幕付きで楽しめるようになるとは、時代は変わったなあと。

中国でのネット動画視聴において、有料課金という習慣はなかなか育たず、基本は全て無料公開。タダでなんでも楽しめるのは産業的にどうかとも思っていたところで、ふと、テレビも見る方は(NHKは別として)基本無料なわけで。 広告収入からきっちり制作側にコストが回せる仕組みが確立できるようになってきているのであれば、ネットはますますテレビと肩を並べる主要メディアとしての期待が高まるのかもしれません。

現在中国の国産アニメは、やはりテレビアニメ放映や劇場版公開を柱としていますが、ドラマや映画では、すでにネットで同時配信という作品も増えてきています。もしかしたら今後はネットで先行配信、もしくはネットのみでの配信という大型作品も増えてくるのかもしれません。(すでに土豆網自社制作のドラマなども出てきていますし)

SNSの流行などを見ていても、中国での潮流はいいとこ取りのひとっ飛びで最先端をゆくので、こうした変化も予想以上に早いかもしれないと思うのです。

中国では、DVD、CD等の有料正規ソフトの市場がなかなか育ちませんでしたが、ここを飛び越えて、ネットで全てが完結する市場に一足先に移行しつつあるようです。(ちなみに、パソコンだけでなく3G環境の整ったモバイルによる動画視聴も一般的になってきています。上海の地下鉄では、モバイルで映像を見ている人の割合が、日本の地下鉄よりも多いように思います。そのような環境の中で、iPhoneより画面の大きいGALAXYに人気が流れつつあるのも、さもありなんなのかもしれません)

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神奈川県生まれ。牛心オーナー。 青山学院大学文学部卒業。北京電影学院留学を経て、2002年より、中国・上海のテレビ制作会社に勤務し、日本文化や流行を現地で発信する仕事にたずさわる。

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