チンゲンサイの夏休みとは?

20160808-00

日中共同スタッフ・キャストで制作するインディペンデント映画
さぬき映画祭優秀企画「チンゲンサイの夏休み」

中国大陸は北京・上海・杭州、そして香港・台湾から集まったキャスト・スタッフが瀬戸内海に浮かぶ小さな島(粟島・志々島)でひと夏のロケを行います。

監督は香港人、脚本・制作は上海在住の日本人。そのほかキャスト・スタッフも映画の趣旨に賛同してくれて集まった日中の混合チームで編成されています。

秋のさぬき映画祭で50分バージョンを上映後、中国でのネット展開、海外への映画祭出品を準備しています。

Story

中国から島にやってきたのは日本人の父親(早河幸太;36歳)と若い上海人の母親・夏来(シャア・ライ;23歳)、そして小学校3年生になる息子の夏冬(シャア・ドン)。

日本が初めての夏冬にとっては、期待に胸膨らむ夏休みになるはずだったが、両親の様子がどうもおかしい。夏冬は小さな不安を感じながらも、島で出会う海ほたるや森の昆虫などの大自然に思わず夢中になってゆく。島ではゆっくり静かな時間が流れていて、出会うのはお年寄りや一風変わった芸術家たち。
今では住民数十人のはずの小さな島で、夏冬はしばしば駆け抜けてゆく子供たちの笑い声を耳にする。
不思議な思いで夏冬は子供たちの影を追って森に入り、“大楠”に出会う。

島の人々の数え切れないほどの思いを紡ぐ不思議な力を持った楠の大樹。この大楠により島は守られていた。夏冬が追いかけていたのは、島のそこかしこに漂う、悲しみを浄化した後に大樹からあふれ出していた楽しかった記憶のかけらたちだったのだ。
大楠を通して、夏冬は島の人々が抱える消えない悲しみのかけらに触れる。あまりの大きな喪失の悲しみに飲み込まれそうになる夏冬。そんな夏冬に、「大人になることは、失う悲しみを知る過程なのだ」と島の長老が教えてくれる。長老が夏冬に託した小さなチンゲンサイの種。それは日中の架け橋でもあり、夏冬の家族の心をつなぐ種でもあった。

楽しみにしていた島の夏祭りの前に、長老の死が知らされる。食べてもらう約束をしていたチンゲンサイはまだ小さな芽を出したばかりだった。祭りの最後に大楠を囲み、人々は悲しみと喪失を歌声と笑顔に変え、ゆっくりと空へと解き放ってゆく。夏冬は大樹を見上げる長老の最後の微笑に出会うだった。

島で過ごした時間と出会いが、夏冬をひと夏の間に少しだけ大人にする。島を去る前に、大樹の前で自分の出生に関する真実と両親の抱える悲しみを知る夏冬。夏の最後に夏冬は、初めて自分自身で人生の選択をするのだった。

Location

瀬戸内海に面し、四国の北東に位置する。県庁所在地は高松市。日本で一番面積の狭い県で、高い山がなく、県土のほぼ半分を平野が占めている。
また、北部に広がる瀬戸内海には、多くの島々が点在している。関西方面からは、瀬戸大橋により道路・鉄路で結ばれている。
本年度より、春秋空港による上海⇔高松の直行便が運行開始予定で、両都市の交流が期待されている。

香川県といえば、「讃岐うどん」が有名。
うどんは弘法大師が唐から香川に伝えたという言い伝えが語られている。映画の中でも親子が島の老人に教えてもらいながらうどんを粉から一緒に作るシーンが登場する。

メインでロケを行うのは、香川県の中でも瀬戸内海に浮かぶ小さな島粟島と志々島 。映画の中では、ひとつの“名見島”として登場する。
志々島 は、1周2時間ほどで回れる小さな島で、その中央の森に楠の巨木がそびえている。以前は漁村として栄えた島も、現在は数十人のお年寄りがひっそりと暮らしている。お隣の粟島 は、宿泊施設などもあり住民も多い。春から秋にかけて海で見られる“海ホタル”は島ならでは。映画の中にも登場する。

また、島ではブイを使ってアート作品を作る芸術家・悦子さんや、お年寄りによる粟島ふるさと劇団などが活動していて、映画にも出演予定だ。
これまでにも映画「男はつらいよ」や「機関車先生」などのロケ地にもなったことがあり、現代では失われつつある自然と人情味が残された島なのである。

Key words
この映画のキーワード。
日中のつながりは、こんな意外なところにもあったんです。

【チンゲンサイ】
チンゲンサイ(青梗菜、学名:Brassica rapa var. chinensis)は、アブラナ科の野菜。
中国野菜の中で日本で最も身近な野菜のひとつとなっている。
原産地は中国華南地方。日本には 1970年代の日中国交回復の頃に入ってきたと言われる。

【うどん】
うどんは弘法大師が唐から香川に伝えたという言い伝えが語られている。
唐から伝えられたのは小麦粉の生地に餡などを包んだ「こんとん」と呼ばれる唐菓子で、現在のうどんは素麺の元祖である「索餅」と、ほうとうの元祖である「餺飥(はくたく)」の技法をベースに形成されたと考えられている。また、讃岐産コムギのDNA鑑定結果や製法の類似点などから、中央アジアのラグマンが空海らの遣唐使が訪れていた長安を経て持ち込まれ、讃岐うどんのルーツの一つとなった可能性も指摘されている。

【樹木信仰】
生きた木は木陰を作り、風よけとなり、種によっては食糧を供給し、心に潤いを与えるので、人家周辺に木を植える事は世界に広くおこなわれる。地域によってその有り様は様々である。特に大きな樹木を神聖視して、これを祭り崇めることを巨木信仰という。
天に届く木や、世界各地に樹木に関する神話伝説があちこちに見られる。単独の樹木ではなく、森林、あるいはそれを置く山を信仰の対象とする場合もある。日本では神社には鎮守の森があり、さらに神木がまつられることもある。