中国語の「吃大鍋飯」(大釜飯を食べる)は、仕事の出来に関わらず平等に食べられるという意味で、少し皮肉っぽい表現です。大変豊かになった現在でも、上海の生産工場では、毎日総経理から工員たちまで皆同じものを食べています。しかも、食券を買う必要もなく、会社側が支給するもの。寮に住む外地から来た工員さんにとっては、昼食の社食は、貴重な栄養源となるため、2、3種類用意されたメニューを物色する目もかなり真剣。朝食も食券0.5元/食(約8円)で調達することができ、工員さんたちは残業があると3食全てを社食で賄うことになります。
このため、社食のおいしさは、彼女たちが今後仕事を続けるかどうかの死活問題にもなります。現に、辛いものを好む内陸出身者は、甘めの味付の上海料理が口に合わず、入社してすぐ田舎に帰った人もいるほどです。
その社食は、野菜、肉・魚類など3つのおかずと白米がワンプレートに入ったもので、しかもスープ付。もう一つは、麺やチャーハン等の軽食とスープ。学校や工場では、最低でもこの二種類があります。
写真:ある日の昼食
写真:お粥菜包
工場では何千人もの食事を賄うため朝早くから忙しく調理され、冬は冷めた状態のおかずが出され、夏は熱すぎるスープを汗だくで食べるはめに。出勤し始めたばかりの頃は半分も食べられなかった私ですが、空腹と周りの人の食べっぷりにつられて、毎回完食!
何といっても大きなお釜で大量に調理するので、紅焼肉(豚肉のしょうゆ煮)等の煮物は、家庭でつくるより美味。まずいと不評の中国産米も、蒸し係のおじさんの絶妙な蒸し加減でおいしくふんわり。
写真:蒸し担当のおじさん
出勤さえすれば、食事が付いてくるわけですから、仕事量が少ない日は、申し訳ない気さえします。
「大鍋飯」はモラルハザードの象徴のように論じられますが、日本でも「同じ釜の飯を食う」というように、上司も部下も関係なく皆が平等に同じものを食べることは、人と人をつなげる近道だと思います。
食を大切にする中国ならではのいい面だと都合よく解釈し、本日も美味しく「大鍋飯」をいただきました。