第23回:「つながりのその先へ」-上野由美子さん-

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ゲーム会社の駐在員として2003年に上海へやってきた上野さん。
その後、同じく駐在でやって来ていた中国人の同僚と独立、起業したが、縁あって彼女の大学時代の後輩の陶芸家をサポートすることになる。万博に向けて加速し続ける上海と同様、めまぐるしく変化する上野さんの上海生活だったが、そのスピードの中どんな気持ちで毎日を過ごしていたのだろうか。

「2007年からは、陶芸家・陳くんをサポートしながら、磁器絵付け教室を開いたり海外での販売戦略を立てたりしていました。1年半くらい経って、中国人の元同僚・エンちゃんが泰康路の田子坊という場所に独立したお店を持つことになり、私も商品企画や店番を手伝うことになりました」
信頼のおけるパートナー・エンちゃんに一緒にやろうと誘われ、嬉しい気持ちと店を運営する面白さに興味を引かれた上野さんだったが、次第に違和感のようなものを感じるようになっていた。
「このままエンちゃんの夢に便乗していていいのかな、と思ったんです。楽しいけど、今していることは主体的じゃない。たとえば世界中どこに行っても一人でやっていける、そんなスキルを身につけたいと思うようになりました」

するとその思いに応えるかのように、出会いが向こうからやってきた。
「一人は田子坊のパーティーで知り合った日本語教師、もう一人はゲーム会社で働く友人です。『手に職』の日本語教師に興味があったのでいろいろ聞いていたら、北京に移動する彼の代わりに働いてくれないかと誘われたんです」
さらに、ゲーム会社で働く友人からゲームのローカライズの仕事をもちかけられた上野さんは、エンちゃんのお店を辞め、2つの仕事をかけもちすることに決めた。
「10時~17時まではゲーム会社で、18時から21時までは日本語のレッスン。クラスでは結構人気があったんですよ。笑 スケジュールはいつもぎっしりでしたが、バランスがとれて楽しい毎日でした」

ところが、しばらくすると状況は一変、なんと無職になってしまう。
「ゲーム会社の正社員になる話があったので、日本語教師を泣く泣く辞めたら、東京オフィスができたので上海でのローカライズの仕事がなくなったと言われ、今度はゲーム会社を辞めなければいけなくなってしまったんです」
時は2010年初春、万博を前に華やぐ上海で一人呆然とオフィスを後にする上野さん。
しかし、今回も出会いは向こうからやってきた。

「他の用事でやり取りをしていた友人が、私の状況を知って、たまたま彼女の友人からの求人メールを転送してくれたんです。このタイミングは、やるしかないと思いました」
その仕事というのは、なんと万博の日本館事務局スタッフ。高倍率のアテンダントを横目に、面接も一発OKで再び怒涛の日々が始まった。
「仕事内容はあってないようなもの。各国大使や日本館ゲストの訪問予約から交渉、アテンド、通訳まで何でもやりました。普段会えないような人に会えることは貴重な体験でしたが、各館によって運営が違うし、日本館運営に関して文句を言われたり、毎日へとへとで、戦場のようでした」
人間の上から下まで見たという現場では、考えること、学ぶことも多かったという。
「本当にいろんな人に接して、状況はいろいろだけど人は人だし、幸せって何かは分からないものだなと感じました。それと同時に、自分はどうなんだろうと考えたときに、あまり日本人らしくない自分が、日本を代表する立場の1人として海外の方に日本のことを説明するのは不思議だなと思っていたんですが、自分の中にも日本人ぽいところがあるなと気付いたり、世界の中での日本について考えたりする機会が増えたように思います」

万博が終わり、日本で充電した上野さんを迎えたのはもちろん新しい出会いだった。
日本語を教えていた韓国人の生徒の友人が、上海に本社を持つ韓国系の会社でゲーム開発を企画からできる人を探しているというのだ。
「日本から上海に戻った後も、リサーチの仕事を手伝ったり人材会社に登録して就職活動をしていたんですが、これは『私にしかできない仕事』だと感じ、すぐに引き受けました」

この会社で働き始めて半年、現在、上野さんはゲームの企画を考えるところから遊び方まで一人でプラニングしている。上海に来てから職も住む場所も、人間関係もこれでもかというほど変化してきたが、「縁がある限り上海に居続ける」つもりだ。
「これまでの上海生活を振り返ってみると、求められるところへ行くとうまくいっている気がします。そういう流れに乗れるから上海にいるし、変化があるから飽きずにいられる。人のつながりも年々強くなっていくから、チャンスも増えていくんです。この後もどうなるかな?・・・まだまだ続いていく気がします」

今しかないと思っても、その流れに身を任せ、すぐに行動できる人はやはり多くはないだろう。その縁に感謝し、楽しめるたくましさが人のつながりを呼び、上野さんを次の場所へと導いていくのかもしれない。


上野由美子さんインタビュー(2007年):
https://www.shanghai-station.com/jodsolqri-121/#_121

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